稀代のビジュアリストが描く、野蛮な英雄コナンの生涯

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【蛇足】
ワイルド・ボーイ」「Afetr Blue」や数々の短編で世界を魅了するフランス映画界の異才ベルトラン・マンディコ監督、待望の長編三作目となる本作は、転生による6つの世代と時代、そして死を通じて野蛮人コナンの生涯をハード&ウィアードに描く圧巻の映像絵巻。過去作に触れている方には今さら説明不要な、マンディコ ワールドが更にパワーアップ。強烈なバイオレンスにカニバリズムなどのグロテスク描写も盛り込みながら、白黒/カラーを織り交ぜた唯一無二の世界が展開する。

アーノルド・シュワルツェネッガー氏が演じた映画「コナン・ザ・グレート」でも有名な野蛮人コナンを、本作では女性に設定。この性倒錯は「ワイルド・ボーイズ」で時計じかけのオレンジ的少年グループを女優に演じさせたマンディコらしい改変。女戦士レッド・ソニアは女性キャラのままにして(というか、出演者は基本的に全て女性)、同性間の愛情を描くのは、これもまたLGBTQを抜きにしてその本質は語れないマンディコ作品としては当然か。カメラマン(芸術家?報道カメラマン?それともただのパパラッチ?)の犬人間を相棒に振り返る我が生涯という壮大な旅路は、「Afetr Blue」における主人公母娘のケイト・ブッシュ暗殺行を彷彿とさせる。このように前二作の要素をブレンドした、言うなれば決定版としての三作目という位置づけの「She is Conann」。なので、マンディコなんて人の映画は知らないよ、という方も、本作から観始めるのは大いに有りかと。但し、強烈な毒気に当てられる危険性を承知で臨んで下さいませ。

さておき、異なるスタイルで描かれる6種の人生ステージという構成が証明した、監督の引き出しの多さに改めて感心させられたわけだが、それぞれがバラバラに空中分解することなく、人工的映像美というぶっとい芯(いや、コナンですから剣ですか)に貫かれた一本の長編映画として見事にまとまっている。105分の映画ですが、これを見通した後の異様な達成感、充実感は並みの映画では味わえないのではないでしょうか。

ともあれ、ぜひ注目して頂きたいのが、転生を続けるコナンに変わらず付添い、観客にとってはガイドのような役割を果たす相棒の犬人間ライナー。特殊メイクのクオリティが高過ぎて、違和感なく映像に溶け込んでいるこのキャラを演じるのは、マンディコ監督の創造的女神とも言うべき存在、名女優エリナ・レーベンソン。全編通じて素顔が見えずという、女優としてどうなの?状態。それでも滲み出す佇まい、隠しきれない圧倒的な存在感!各年齢のコナンを演じる女優陣も実力派揃い。若き蛮族時代のパワフルさも良いが、個人的には55歳となり、背中に見事な翼を生やした歴史の天使=コナンを演じるナタリー・リシャールの貫禄ある立ち姿に目を見張りました。

「愛の嵐」「コックと泥棒、その妻と愛人」「スコピオ・ライジング」「クラッシュ」にファスビンダー等々、マンディコ監督が影響を受けた映画の記憶を、鍋に放り込んで煮しめたような「She is Conann」。ロバート・E・ハワード原作のコナンシリーズなど、初めから存在しないかのようなフリーダム過ぎる発想、それを映像に翻訳するセンスと具現化する確かな手腕。これこそベルトラン・マンディコ監督最大の強みであり魅力。ぜひご堪能下さい。

【特典】
本作の出演者が、登場して描かれるメタ的短編を収録
「Rainer, A Vicious Dog in Skull Valley」
「We Barbarians」

※フランス語音声/英語字幕(※但し英語音声部分には字幕はつきません)

She Is Conann (2023)
 4,950



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