エクストロ
Xtro (1983)
 
\4950

80年代屈指の大傑作劇場未公開SFホラー!

ある日突如姿を消した父親が数年振りに帰って来るものの、彼はエ イリアンと化しており・・・といったありきたりな物語を、グロテスク描写もふんだんに散りばめた常軌を逸した映像のつるべ打ちで描いており、同時代の並みのホラーとは一線を画す怪作となっている。
エイリアンにレイプされた女性の腹がみるみる膨れ上がったかと思う と成人男性を産み落とす、というシーンひとつとってみても本作の狂 いっぷりは十分だが、これはまだ序の口。数ある名場面の中でも、とりわけ素晴らしいのがエイリアンの化身である父親に伝授された魔法をトニー少年が炸裂させるシーン。ここでは、おもちゃのピエロが実体化(演じる俳優ピーター・マンデルは「ジェダイの復讐」でイウォーク族を演じてみたり)し、ピカピカ光るヨーヨーで観客を幻惑したかと思うと、巨大化し人間サイズになったGIジョーが近所のやかましい婆さんを銃剣で突き殺し、オモチャのラジコン戦車は殺傷能力を持つモノホンの兵器に変貌する始末。個人的には、この怪しさ抜群の小人ピエロが絡む一連のファンタジックなシーンが最大の見せ場だと思う。
そして忘れてはいけない、あのエイリアンの異形。初めて観る者は例外なくアっと驚く(そして2秒後にはその仕掛けに気づいて失笑する)はずである。今やCGIのおかげで逆間接の骨格をもつエイリアンなど、全く普通な時代だが、天才HRギーガーのデザインから生まれたエイリアンでさえ人間型だった当時、スーツ系モンスターでこの姿態である。いっちょ観客を驚かせてやろうという心意気がひしひしと伝わってきて嬉しくなる。
真夜中の丘で迎えるクライマックスでは無謀にも「未知との遭遇」や「E.T.」に真っ向勝負を挑み、何とそれらを凌駕する奇跡を実現してしまった!眩いばかりの映像美に圧倒されながら、ただただ見とれるしかない名場面となっており、これは是非とも80年代当時、映画館の大きなスクリーンで大音響と共に浴びるように体験したかったと思わずにはいられない。 ところで、こっそり彼氏を連れ込んではセックスばかりしている下宿人アナリスを演じるのはマリアム・ダボ。a-haの主題歌がナイスな「007/リビング・デイライツ」のボンドガールである彼女のデビュー作がこの「エクストロ」なのだが、繭にされて巨大な産道からエイリアンの卵を産み落とすという、いやはや何ともすさまじいデビューの仕方である。 一時間のドキュメンタリー「エクスプローリング・エクストロ」」を筆頭に特典も充実しているが、ブロムリー・ダヴェンポート監督インタビュー「エクストロ・エクスポーズド」が傑作。タイトルのみ流用で内容的には直接関連性のない続編「エイリアン・ウォーズ」と「シークレット・ファイル/接・近・遭・遇」も演出しているダヴェンポート監督は、「エクストロ」の印象的な音楽も手がけたりとなかなか多才な人物だが、自虐的ユーモアに溢れたこの投げやりインタビューがめっぽう面白い。「支離滅裂な展開は、その場の思いつきでやってみただけだから」とか「猟奇殺人で逮捕された男の部屋に『エクストロ』のビデオがあるのがニュース番組に映って売上げ急上昇」とか、「『エイリアン・ウォーズ』の主演ジャン・マイケル・ビンセントは見事に何もしなかったとか。監督、最高なお方です。

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