Eloy De La Iglesia's Quinqui Collection
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「カンニバル・マン」のエロイ・デ・ラ・イグレシア監督が叩きつける、実話ベースの衝撃的未成年犯罪転落ドラマ三部作

「Navajeros」(1980)
主人公の非行少年ヤロは三人の悪友と徒党を組んで窃盗、強盗、襲撃やりたい放題。まだ十代半ばだが、年増の娼婦の部屋に転がりん込んで生活している。そんなある日、ヤロは、押し入った娼館で幼い頃に別れた母親と対面してしまう。やがて仲間の一人が警官に射殺され、さらに過激派組織であるバスク祖国と自由(ETA)のメンバーと警察との銃撃戦に巻き込まれ・・・。クラシックをBGMに、公園でカップルを襲っていた敵対グループと大乱闘を繰り広げるシーンは 「時計じかけのオレンジ」へのオマージュか。生と死がカットバックで交錯するラストが衝撃的。

「El Pico」(1983)
バスク祖国と自由(ETA)からスペイン国民を守る治安警察の所長を父に持ち、病床に伏す母や妹たちと暮らす青年パコは、政治家の息子でガールフレンドと3Pを楽しむほど仲の良い親友ウィルコとともに麻薬家業で金を稼ぎ、自分たち自身もヘロイン中毒という裏の顔を持つ。やがて、この秘密が厳格な父親にばれてしまい、優しい母は天国に旅立ち、地獄の禁断症状を乗り越えて更生したかに見えたが・・・。果たしてテロと戦う警察所長と、犯罪者の親という相容れない立場の間で揺れる父が選んだ結末は?アメリカに「哀しみの街かど」が、西ドイツに「クリスチーネ・F」があるならスペインには本作がある!陽気に響くミスマッチなシンセスコアが耳について離れない青春残酷薬物物語。

「El Pico 2」(1984)
大人になったパコのモノローグで語られる前作の直接的続編。立場を危険にさらしてまで選んだ父の恩情とは裏腹に、結局警察に捕まり刑務所送りとなったパコ。このスキャンダルを嗅ぎつけた新聞記者の登場で父は苦しい立場に追い込まれるが、息子への愛は変わらなかった。一方で、警察署長である父が手配した弁護士の、証人に対する脅迫まがいの行為のおかげで無事に釈放されたパコだったが、またまたムショ時代に知り合った悪友の元を訪れ・・・。ヘロインを打って意識が朦朧とするパコ。その横では、パコの彼女と悪友が猛然とセックスに励んでいる。そんな三人の犯行は、警官から拳銃を奪ったことでますますエスカレート、もはや後戻りはとっくに出来なくなっていた。腕に深々と突き刺さる注射器の執拗なまでのアップが痛々しい。息子を逮捕すべく決心した父親の表情、そして訪れる残酷でなんとも遣る瀬無い結末。

三作全てで主人公を演じるのはホセ・ルイス・マンザーノ。その少年らしい幼さを残す顔立ちが、悲劇を一層際立たせる。


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