Fuck the Devil + Fuck the Devil 2 :Limited Edition (1990-91)
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ドイツが東西再統一された1990年、とあるドイツ人の若者が、家族や知人の協力を得て大好きなホラー映画を撮ってみた。そんな、ただのホラー好きな素人による完全なるアマチュア作品が、30年以上の時を経てどういうわけだか、特典も満載でBlu-ray化されてしまったよ!

ストーリーは限りなく無に等しい。「ボエェ〜」という呻き声を発する死霊に憑りつかれた青年(演じているのは監督自身)が殺人鬼ファッカーとなって、近場にいる家族を手当たり次第に殺しまくるだけ・・・なのだが、開き直りにも似た映像の破壊力が何しろすさまじい。
例えば、赤ちゃんの首がもげるという衝撃シーンの、人形であることを一切隠そうとしない潔さ。あるいは、背後から植木バサミで首を切断される女性のシーンで、マネキンの首を切るのだが、カットを割って悲鳴を上げる表情をインサート、などという小手先の編集を放棄。その結果、首を切られているのにかすかにほほ笑む女性=マネキン、という衝撃映像となってしまった。
切断された自分の首を身体に乗せて復活したファッカーが、次の瞬間血で足を滑らせてまた首がもげるズッコケシーンで、窓から地上に落下してゆくファッカーのペナペナな身体・・・。
このような、監督の意図を超えたところに偶然生まれたインパクトは、全てが緻密な計算の基に設計されたウェルメイドなメジャー映画では先ず味わうことの出来ない、まさに自主映画の醍醐味である。

因みに、PART1、2ともにやっていることはほぼ同じ。本編がそれぞれのディレクターズカット最新バージョン(各29分)、特典にオリジナル版(35分と40分)を収録という仕様になっている。
監督本人も、まさか再編集する日が訪れるとは思わなかっただろうが、ディレクターズカットは無駄を刈込んで尺が短くなっており少しテンポが良くなっている。が、オリジナル版では、延々と移される車庫入れシーン(切り返して入れ直したら、逆に歩道に乗り上げてしまう意味不明さ)が少し短くなったとか、そんな感じで印象は変わらない。
監督のコメンタリーや、その他の短編なども収録。封入のブックレットには、手作りのVHSジャケットの写真が掲載されており、映画ごっこに青春をささげた監督の熱い思いが伝わる。

しかし、あれですな。遥かに優れた自主映画やメジャーの大作でさえ、30年も経てば全く忘れ去られている作品が無数にある一方で、ドイツのアマチュアが撮った自主映画が、30年以上経ってBlu-rayで世界に届けられるというこの状況に、映画の価値って何だろう?と思わず考えさせられますな。
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