ファイナル・オプション
The Final Option
(1982) aka WHO DARES WINS
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頂点に君臨し続ける特殊部隊映画のバイブル

【余談】
いきなりどうでもいい個人的な話から始めさせて頂き恐縮ですが、店主が本作の存在を知ったのは80年代後半頃。別冊宝島「このビデオを見ろ!」における青井邦夫氏の「ただひたすらGUNマニアのための名作珍作12選」というコラムを読んだ時でした。
名作『パニック・イン・スタジアム』の次に、「アメリカのSWATもすごいけど、イギリスには、SASっていうもっとすごい組織がある」という書き出しで始まり、「テロリストのほうが可哀想になるほど」と締めくくられる本作の紹介を読んで、店主はSASの存在を知るとともに、み、観たい!この映画っ!!となったのでした。
しかしながら、これがレンタルショップにはなかなか置いておらず、観ることが叶わない日々が数年続き、90年代後半頃は、店主にとって世界一観たい映画と化しておりました。ようやく観ることが出来たのは、ビデマで働くよになった2000年頃、例の透明プラケースに入った東芝映像の中古VHSがビデマに入荷したことを知って、まだ入社したばっかりだったし、絶対売れるのは分かっていたのでちょっと気が引けたんですが、従業員割引を駆使して購入、十年以上かかってご対面となりました。
テープが傷むのを恐れ、DVD-Rに焼いてジャケット+ラベルも作り、お手製「ファイナル・オプション」DVD、その後、国内版DVD、輸入版Blu-ray、国内版Blu-rayとメディアが更新される度に買い替えて参りました。国内版Blu-rayは、あいにく現在廃盤となっている本作。ファンで買い逃している方は流石におられないかと思いますが、もし廃盤後に本作に興味をもった方がいらっしゃったら、どうぞこちらの輸入版Blu-rayをよろしくお願いいたします。本作や傭兵哀歌の傑作「ワイルド・ギース」のプロデューサー、ユアン・ロイドのドキュメンタリーなどが収録されております。

↓店主が「ファイナル・オプション」を知るきっかけとなったコラム

↓店主が自宅に飾る、ニムロッド作戦に参加したSAS隊員2名の直筆サインが入った絵画

【作品解説】
1980年5月5日。TVカメラは、数日前にテロリストグループに占拠されたロンドンの駐英イラン大使館に突入する黒装束の謎めいた男たちを映し出した。ニムロッドのコードネームで知られるこの作戦により、イギリスの切り札である特殊部隊SASの存在を、世界は知ることとなった。

第二次大戦中に、敵陣への潜入、奇襲、破壊工作を主たる目的に組織されたSAS(陸軍特殊空挺部隊)
は、その後現在に至るまで世界中の紛争地域で活躍、いや暗躍を続ける、最高峰の連度を誇る特殊部隊である。60年代末からは北アイルランド紛争でIRAを相手に市街戦や諜報技術にも熟達し、テロリズムぼ脅威が吹き荒れた70年代に対テロ作戦を専門とするCRW(対革命戦)ウイングが組織された。

SASのモットーWho Dares Wins(危険に挑む者が勝つ)をオリジナルタイトルとした本作は、本分冒頭の駐英イラン大使館占拠事件をモデルとし、分厚いベールに包まれたCRW中隊の活動を、当時可能な最大限のリアリティで再現した史上初の本格的なSAS映画である。

実弾が飛び交う中、隊員自身が人質役となるキルハウスでの訓練や、爆薬でレンガ壁に穴を開けて隣家に突入する人質救出など、それまで描かれることの無かったSASの実態に、ミリタリーファンは悶絶した。クライマックスは大使公邸の急襲だが、ド派手な80年代ハリウッドアクションの対極に位置する、エンタメ性の低いクリアリングの一挙一動にマニアは異様な興奮を覚え、震えた。女テロリストと対峙し、一瞬ためらう主人公。次の瞬間、別の隊員が連射を叩き込み、女の死体がぼろ雑巾のように吹っ飛ばされる。隊員は主人公に一言「反応が遅いぞ」。一瞬の迷いが生死を分けるプロの現場には、人間的な感情が入り込む隙など無いあしい。

イアン・シャープ監督の硬派な演出は、主人公を演じたルイス・コリンズが醸し出すプロフェッショナルな佇まいを際立たせ、映画は抜群の説得力を獲得している。隊員が使用するブローニング・ハイパワー=プロが使う拳銃、というイメージの確立に本作が一役買っているのは間違いない。『狙撃者』『ワイルド・ギース』のロイ・バッドが手掛けた音楽もいぶし銀の魅力だ。

本作の輝きは製作から40年以上経った今も、全く色褪せていない。否、ハリウッド主導のヒロイズム満開な特殊部隊系映画が席捲する昨今に置いて、その魅力はむしろ増しており、今後もバイブル的存在として君臨し続けるだろう。

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