ロンリー・ブラッド
At Close Range (1985)
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息子が間近で見た父の姿、その本性は・・・

貧しい田舎で育ち、持て余す若さ、日常の鬱憤をやんちゃで晴らすブラッド・ジュニア(ショーン・ペン)。ある日、彼の前に、悪名高い犯罪者、正真正銘の悪党でずっと昔に家を出た父親ブラッド・シニア(クリストファー・ウォーケン)がふらりと現れた。顔も覚えていない父だったが、高級車を乗り回し、大金を小遣い代わりに置いてゆく姿にいつしか憧れを抱き、ジュニアは裏稼業の世界に足を踏み入れる。だが、犯罪グループの一員として父の姿を至近距離から目撃した時、口封じのためにいともたやすく殺人を犯す非道振りにショックを受け、さらに大切な彼女を暴行されて、今さらながら父の本性に気づくのだった。一方、自分の身に危険が及びそうになるや、我が子にさえ容赦なく牙をむくシニアは・・・。

車を運転するショーン・ペンの表情を延々を映し出すオープニングクレジットから心を鷲掴み。クリストファー・ウォーケンとショーン・ペンという世代の異なる、稀有な曲者俳優を起用して描く、実話をベースにした犯罪ドラマ。崩壊したアメリカの父親像、家族の在り方を容赦なくあぶり出す力作である。ショーンの義弟役は40歳の若さで逝去した実弟クリス・ペン。彼女役はブレイク直前のメアリー・スチュアート・マスターソン。端役で若き日のキーファー・サザーランドの顔も見える。

ところでウォーケンは、映画で銃を扱う場合、安全上の理由から必ず自分で小道具の銃をチェックするという。本作でジョーン・ペンに銃を突き付けらるシーンでは、キャメラが回り始る直前に、ショーン・ペンがいきなり「別の銃をくれ」とスタッフに指示。結果、未チェックの銃を突きつけられる羽目になったとか。あのビビり上がるウォーケンの姿は演技では無くマジだったのだ。

エンディングテーマは、ショーン・ペンの当時の奥さんマドンナのバラード曲「リヴ・トゥ・テル」。「ビジョン・クエスト/青春の賭け」の主題歌「クレイジー・フォー・ユー」に続いて、 しっとり系マドンナもやっぱりイケる!と評価が高く、映画を締めくくるに相応しい。本作の監督ジェームズ・フォーリーは翌年、マドンナを主役にコメディ「フーズ・ザット・ガール」を監督することに。

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