70年代でも90年代でもなく、80年代でしか撮りえなかったコメディ!

何不自由のない生活に暇を持て余し、バスタブメーカーの社長である夫との結婚生活に物足りなさを感じる平凡な主婦ロバータが、新聞広告で見かけた「必死にスーザンを探している」というメッセージに好奇心を抱き、スーザンの姿を一目見ようと行動を開始。しかし人違いから、頭を打って記憶喪失、そして自分をスーザンと思い込み事態は思わぬ方向へ・・・

80年代を代表する傑作コメディがデラックス仕様の限定版Blu-rayで登場です!無名時代の自主制作映画「マドンナin生贄」、カメオ出演の「ビジョン・クエスト/青春の賭け」を経て、本作が初の本格的出演作となるマドンナ。後にラジー賞最低女優賞の常連となる彼女ですが、ここで演じる・・・と言うよりも、ほとんど素(実際、身に着けているアクセサリー類などは私物だそうです)のようなスーザンの、悪びれもせず周りを振り回す奔放さが魅力的。70年代でも、90年代でもなく、80年代半ばのタイミングだからこそ実現した、二度と撮ることのできない映画だと思います。

監督は、バンドの追っかけで根無し草にような生活を送る少女の青春映画「スミサリーンズ」のスーザン・シーデルマン。撮影当時32歳だった彼女ですが、70年代初めはニューヨーク大学で映画を学びながらフィルモア・イーストの地下で寝起きし、当時のフェミニズムを目の当たりにしているお方。ご自身、女流監督と呼ばれることに違和感を覚えているそう。そんな彼女の若くてしなやかな感性が発揮され、ゴリゴリのウーマンリブとは異なる軽やかな手法で、さりげなく女性解放を描いており、スーザンの影響を受けながら変わりゆく主婦ロバータの姿は、とても印象的だったりします。また、例えば屋上でのロマンチックなシーンで、ふと隣のアパートの窓を見るとジョン・ルーリーがサックスを吹いている姿が一瞬見えたりして、そんなストーリー展開に直接関係がなくとも心に残るシーンもたくさんあります。

物語の鍵を握るスーザン役に演技経験のないマドンナを推薦したのは、オーディション時、そのナチュラルで自信に満ちた堂々たる佇まいに魅力を感じたシーデルマン監督自身。ジェニーファー・ジェイソン・リー、メラニー・グリフィス、レベッカ・デモーネイらも名を連ねる200名の候補者から、マドンナ起用の決定打となたのは、制作会社オライオン・ピクチャーズ社長の息子がマドンナのファンで「彼女は良いよ」と父親に進言したからだとか。

撮影真っ最中の84年秋、マドンナがその名を世界に轟かせるきかっけとなった2ndアルバム「ライク・ア・ヴァージン」がリリースされ、本作を取り巻く状況は一変。マドンナを一目見ようと殺到する野次馬たちで、撮影現場は警察も出動するカオスとなったそうです。当時出来立てホヤホヤ、マドンナの初期を代表することになる「イントゥ・ザ・グルーヴ」を聴かせてもらった監督は、この名曲を即座に映画の主題歌として採用。実際にマドンナもよく通ったニューヨークのクラブ、ダンステリアの常連客をエキストラに迎えて撮影した劇中クラブのシーンと、エンドクレジットで効果的に使われることになりました。

世界を席巻するマドンナフィーバーは、映画のプロモーション的にも文句なし。但し、この状況に腹を立てている者が一人だけいました。本作の主役、平凡な主婦のロバータを演じるロザンナ・アークエットがその人。本来彼女を売り出す企画のはずだった本作がすっかりマドンナに乗っ取られる形となったのですから、まぁ無理もないのですが。表舞台ではマドンナとのツーショットなどで良好な関係をアピールし続けたものの、撮影現場では泣き出すこともあったそうで、その胸中には嵐が吹き荒れていたのでしょう。

因みに、完成を祝う打ち上げパーティを開いた店で、その時バーテンをしていたブルーノと呼ばれる男、わずか半年後にTVドラマ「こちらブルームーン探偵社」で大ブレイクすることに。そう、当時無名のブルース・ウィリスです。

さて、エピソードに事欠かない本作ですが、DVDが廃盤になったまま進展のない日本に比べて、海外では熱烈なマニアも多いカルトムービーとして地位を確立しております。オークションをちょっと覗いてみれば、あの古着屋でスーザンが見そめるブーツや、ジミヘンが着てた、エルビスが着てたなどと、でたらめな売り口上で売買される例のジャケットなど、公開当時オライオンが作ったプロモグッズが高額取引されている状況。ジャケットなんかは15万円以下で出品されていたらラッキーかも。これを着こなした女性を街中の雑踏で見かけたら、その日は何か良いことありそう。でも追いかけたりしたらきっとトラブルが・・・深追いは禁物です。

 
他にもマドンナ公式グッズとして、そのあまりの似ていなさ振りが深刻に辛いフィギュアや、こちらは可愛らしくデフォルメされたレゴ人形なども発売されたことがあり、本作がいかに愛され、人気があるかが分かります。
 
ところでビデマの店舗スペースとバックヤードを仕切るカーテンも、実は「マドンナのスーザンを探して」の柄だったりします。いつもご来店頂いているお客さま方、お気づきでしたか?



マドンナのスーザンを探して:デラックス限定版
Desperately Seeking Susan (1985) : Deluxe Limited Edition

 ¥7700


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