ヘイゼルとジョディ兄弟、ちょっとだけ年上の少女アリスの悪童トリオ「三匹の不死身の爬虫類たち」。苦労して手に入れた(=盗んだ)TVゲームを楽しもうと思ったら、彼らを屋外で遊ばせたい母親がパスワードを変更済み。解除のために三人に与えられたミッションは街のパン屋が作る名物ブルーベリーパイをゲットしてくること。そんなの楽勝と思ったけれど、まさか思わぬ冒険が始まってしまうなんて!それはたった一昼夜の、しかしゲームではあり得ないリアルで危険な挑戦でした。愛用のペイント銃を携え、ミニバイクに跨って外に繰り出した三人でしたが、パイ作りに欠かせないまだら模様の卵を探す中で、密猟一家に出会ってしまったよ。一家の実質的ボスである謎めいたムードの女は、呪文で魔法めいたパワーを操る手強い相手。だけども、これまた呪文を使える一家の末っ子娘がこちらの味方についてくれたぜイェイ!果たして、冒険の末に、彼ら三匹の不死身の爬虫類たちは念願のTVゲームで遊べるのでしょうか!?
監督、脚本、製作、編集、出演ウェストン・ラズーリ、カンヌ映画祭の監督週間を沸かせた長編デビュー作。ユタ州の美しい大自然を背景に、少年少女の瑞々しい姿を16mmフィルムでパーフェクトに捉えた本作は、まるで「グーニーズ」から「スタンド・バイ・ミー」へと向かう道端で見つけた小さな宝石のような、珠玉の輝きを放つ冒険ファンタジー映画です。
オープニングクレジットに被さる、一聴ミスマッチとも思えるドラマチックなスコア。エモーショナルなその響きが、これから始まる映画への期待を掻き立てます。そして、冒険を終えた後のシーンで流れるのは日本でも大人気を誇る某イタリアンホラーのスコア。そのドハマり具合は、本作のオリジナル曲と勘違いする人も続出するのでは?と思えるほどです。そしてわたしたち観客はというと、その後に続くエンドクレジットを眺めながら、心中にほっこりと優しい何かが生まれたのを感じて「近いうちに、もう一回観たいな」と・・・。そんな風に思えるのは、このジャンルの定石である少年少女の通過儀礼的側面を決して強調しない演出のおかげでしょうか。冒険の後も、これまでと何も変わらない彼らの日常が続いて行くのだろうと。
本作にどこか愛おしさを感じてしまうのは、決して芸達者とまでは言えない、素のまま以上・演技未満な悪童トリオの成せる技。ヘイゼルとアリスの間に流れるほのかな思い。触れる程度のキスから照れ隠しのハグ、その後はもう抑えきれない喜びが迸る全力ダンス!このシーンなんか、子役と言ってもキャリアがあるわけではなく、まだほとんど素人(と言ったら彼らに失礼ですね)なので、演技を超えた本人たちのリアルな気持ちが透けて、こちらに伝わってくるよう。もう気恥ずかしいやら何やらで見ちゃいられない訳ですよ、普通なら。でもここではそれが良い。魅力になっているんですよね。こういうタイプの映画は、やっぱりフィジカルメディアで手元に置いて、その存在自体を愛でたくなりますね。 |