美術学校に入学し絵画を学ぶために、ベニスにやってきた青年ティノ。下宿先は初老の叔父と歳の離れた美しい叔母の住む広い屋敷だった。間もなくティノは、この屋敷の一部が、半ばうち棄てられたように荒廃しており、扉に閉ざされた階段があることを知る。屋根裏から響く物音も気になって仕方がない。そんなある日、叔父と叔母が留守の間に、住み込みの家政婦が、件の階段を上がった先にある「開かずの間」へとティノを案内してくれた。のぞき穴から室内をのぞくと、そこには狂態をさらす一見叔父に似た男が!聞けば心を病んだ叔父の兄弟だというが・・・

これまで、なかなか観ることの叶わなかったヴィットリオ・ガスマン、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の重厚なイタリア製サイコスリラーが高画質マスターで待望のソフト化を果たした。
監督は「バンボーレ!」等のベテラン、ディノ・リージだが、コメディやドラマの多いキャリアにおいて珍しいジャンルへの挑戦となった本作は、倒錯的な秘密が明らかになるクライマックスなど、まさにイタリア猟奇スリラー=ジャッロといって差し支えない展開。しかしながら、重厚な映像と豪華出演者の演技もあいまって、エクスプロイテーション(搾取)的な同時代の後期ジャッロとは一線を画す重厚な作品となっている。

まず何よりも映像が素晴らしい。主人公の青年ティノが、夕闇に包まれたベニスの町をボートに乗ってやってくる。運河沿いの建物からは部屋の明かりが漏れている、というこのオープニングの美しさと言ったら!舞台となるベニスの街並みや、歴史を感じさせる重厚な屋敷など、今の時代には再現不可能なロケーションの魅力が常に画面から溢れ出しており、それを愉しむだけでも本作の価値は十分にあるかと思う。

儚くも美しく印象的なスコアを担当したのはフランシス・レイ。サントラから本作を知るも、観ることが叶わなかったファンが多かったというのも頷ける素晴らしい音楽を提供している。

最後に。本ソフトはフランス盤となるため、オリジナルのイタリア語音声にフランス語字幕のみという、正直なかなか厳しい仕様ではございます。ゆえに店主も、恥ずかしながら会話の内容はほとんど分からない状況で観ましたため、勘ちがいをしている部分も無きにしも・・・ですがクライマックスで明かされる真実、そこに見られる、愛する者から失われつつある若さへの執着心(あるいは、失われた最愛の存在を別の者に仮託し愛でる執着心)のグロテスクな倒錯性、これは着替えを済ませた最後のカトリーヌ・ドヌーヴ(その姿は、どこか『愛の嵐』のシャーロット・ランプリングを想起させる)と共に衝撃的でした。



◆ 製品仕様 ◆

音声:イタリア語

字幕:フランス語

リージョンALL(表記はリージョンBですが実際はALLです)

Ames Perdues (1977) aka Anima Persa

  ¥5500


(C)2005 VIDEO MARKET ALLRIGHT RESERVED.